第二回「真夜中まで」
第二回レビュー「真夜中まで」
****ネタバレ注意*****
ジャズトランペッターである真田広之演じる守山紘二が、ひょんなことからリンダ(ミッシェル・リー)が二人組の男(南部・大場…それぞれ岸辺一徳・國村隼…実は悪徳警官)たちに襲われている現場に出くわし、助けを求められ、図らずも共に逃げるはめになるところからストーリーは展開してゆく。
リンダは南部たちが恋人を殺した現場を目撃し、それを知られて二人に追われていた。と同時に、南部たちの悪事を暴こうとして恋人が殺された事を知っていて、その思いを引き継ごうという気持ちもあった。いわば逃走劇と復讐劇が入り混じった形で、ゆきずりの守山にすがる。
守山には店で次のステージがあり、そこには守山の尊敬するG・P・サリバンが店にやってくる。彼に気に入られれば、彼のステージにゲストで呼んで貰える事だってあるかもしれない…そういう理由で、はじめのうち守山はリンダと行動を共にしたがらない。
まぁこの辺は王道で、逃走劇に巻き込まれ、最初はいやいやながら、徐々に情が移り…といういわばお約束のパターン。全編に流れるジャズが心地よく、軽快なテンポで話は進む。
と、いいたいところですが…なんていうんですかね、ジャズって、疾走感とあまり合わない気がするんです。個人的に。もちろんテーマがテーマだけに、選曲がジャズになるのは当たり前なのですが。
また、この手のチェイス・ムービー的なものは、どうしてもストーリーを一本道にせざるを得ない。逃げなければならない理由。復讐したい理由。でも警察には話せない理由…いろいろな理由で主人公たちを一つの方向に誘う、というか追い込む。
ぼーっと観ていると、それで十分楽しいのですが、レビューを書こう、と、決めて意気込んで観たりすると…一本道に導こうとするあまり生じるアラが目に付いてしまいますね。
柴田理恵扮する面倒臭そうなファンから守山が逃げるのはいいとして、わざわざ一度は助けるのを断ったリンダの車に乗るところとか、ね。
あるいは
ラスト近く、リンダが一人、恋人が仕掛けたビデオカメラを回収しに駐車場に行くのですが(で、同時期に南部も向かっているだろうからリンダの身が危ない)、大場に襲われている守山を助けた公安の戸塚(柄本明)が、①その場所を知ってるであろう大場を気絶させた上、②これまた場所を知ってる守山を先に助けに行かせ、③自分は大まかな場所しか知らないまま手配をかける、とことか。
守山と一緒に行ったら、ラストシーンがなりたたないがためのご都合主義ってやつですな。
そもそも戸塚が都合よく守山を助けに来たこと自体かなり不自然…。
とはいえ、そんな細かいアラ、バリはあまり関係ありません。楽しめなかったわけではありませんよ。なにしろ出てるキャストがすごいですしね。
しかもみんな若い(笑)
唐沢寿明、戸田菜穂、佐藤仁美、笹野高史、高橋克実、大竹しのぶ!
もたいまさこ、小松政夫、六平直政、名古屋章、はては三谷幸喜!!
…そういえばなんとなく三谷作品的空気もありますね。チョイ役が派手だからかな…
映画はタイムマシーン。こういう旧い邦画は、出演者を見て「若っっ!!」と思わず叫べるだけでも十分楽しい。
まぁそれはそれで残酷な事でもあるのですが…
この頃の真田広之は、文句無く格好良い。トランペッターという役も非常に似合っています。
最初はクールなトランペッター。ライブで大竹しのぶがリクエストした「月の沙漠」を童謡なんてと冷たく拒む。が、リンダとの逃走中に、恋人に教わった一番好きな曲だと、彼女が「月の沙漠」を口ずさむ。
ラストシーン、やや遅刻しながらもステージに戻ってきた守山は、最後に「月の沙漠」を演奏する。彼女のために…
きれいな伏線の回収で、なかなかに美しいシーン。曲の終わりと共にエンドロールが粋ですね。
いろいろ書きましたが、好きな作品。
星で言えば★★★★☆はつけます。